その日も、とても寒く、雨の降る日でした。
意識を取り戻したとき、彼女はすでに致命傷を負い、 大きな血溜まりの中に横たわっていました。
優熙:ごめんね…… 本当は、あなたに新しい人生を歩んでほしくて、 人形として蘇らせたの。
優熙:ごめんね…… あなたを操られる戦闘の道具として、 前線に立たせてしまって。
致命傷を負った彼女は、 とても弱々しい声で、 私にそう語りかけました。
そのときの私は混乱していて、 何が起きたのか、 まだ理解できていませんでした。
ただ、彼女はとても悲しそうで、 顔は涙でいっぱいでした。
優熙:困惑しているでしょう。 でも、もう大丈夫だよ。
優熙:今のあなたは、 もう縛られていない。
優熙:もう、戦うための道具じゃない。
今の私には状況を理解できないと、 彼女は察していたのでしょう。
けれど、衰弱した彼女には、 それを説明する力は残っていませんでした。
彼女は必死に、 ゆっくりと手を伸ばし、 私の頬に触れました。
優熙:あなたの心は、 まだ完全じゃない……
でも大丈夫。
優熙:すべては、 少しずつ元に戻っていく。
そうなるように、 私が設定したから。
優熙:あなたが、 過去のすべてに縛られないでほしい。
優熙:あなたが経験したことは、 とても辛いものだったけれど……
それでも、 この世界は美しい。
素敵なことは、 まだたくさんある。
優熙:旅に出て。
優熙:この世界の人や出来事に触れて、 知っていって。
それらが、 あなたの心を、 少しずつ完全なものにしてくれるから。
優熙:私は、ここにいるよ。
優熙:あなたが私を覚えている限り、 私は存在する。
優熙:私は、 あなたの心の中にいる。
優熙:記憶って、 不思議でしょう。
なぜか、そのときの私は、 突然、涙が溢れてきました。
優熙:すべては、 きっと大丈夫。
優熙:「光曦」。
優熙:生きて。
優熙:この世界はとても広い。
いつかきっと、 あなたの「心」が 何かを感じる人や出来事に出会える。
優熙:いつか必ず、 幸せだと感じられる瞬間が訪れる。
優熙:「光曦」、 幸せに生きてほしい。
優熙:約束してくれる?
「……うん」
そのとき私は、 「光曦」という名前に戸惑いを覚えながらも、 不思議と懐かしさを感じていました。
彼女が「私」に向かって 話していることは、 自然と理解できたから。
だから私は、 ごく自然に、 そう答えました。
私の返事を聞いた彼女は、 安心したかのように、 微笑みました。
そして、 ゆっくりと手を下ろし、 静かに目を閉じて――
そのまま、 私の目の前で、 深い眠りについたのです。